はじめのいっぽ

自分の心と向き合う、はじめのいっぽ。

飲みすぎた。朦朧とする頭でぼんやり考える。今何時だ。ここはどこだろう。

 

うっすらと目を開けて半分だけ体を起こす。カーテンの隙間からほんの少し光が漏れていて、車のヘッドライトが薄暗い部屋をぐるりとなぞっていくのが見えた。隣を見ると規則正しい寝息を立てる君の姿。ああ、またここに来てしまったんだ。後悔と安堵が入り混じったため息をついて、そのままゆっくりベッドに体を倒す。

 

私はもう一度目を閉じて、君の方に体を向けると、少し控えめに鼻の先だけで君を探す。そっとそれに触れた時、少しだけ口を開いて、そして再び眠りについた。

 

 

目を覚ますと君はもういなかった。広くなったベッドの上で大きく伸びをする。テーブルの上には、君の部屋の鍵が裸のまま置いてあった。今回はギリセーフか。寂しいようなほっとしたような、後悔と安堵が入り混じった本日2度目のため息をついた。

こんなことはここに来てから初めてだな。立ち上がって軽く顔を洗い、ベッドを綺麗に直してから、鍵を握りしめて家を出る。君の部屋の鍵を掛けたら、そのままポストの中に滑り込ませた。私のこの想いと一緒に。もうここには来ない。

 

 

 

 

 

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知り合いが1つのお題に対してみんなで文章を書いて、誰がどの文を書いたか当てるという企画をやって遊んでまして、私はその企画に参加できなかったのですが、同じテーマで書きたいことが出てきたので、短編小説風にして書いてみました。テーマは「夜」です。

 

 

どうでしょうか。やってみた感想はめちゃくちゃ楽しいです。笑

短いから書きやすいし。またやって遊んでみます。

 

読んでくれてありがとうございます。